近年、すい臓への負担をかけず、しかも低血糖や体重増加などのリスクを大きく減らした新しい作用の経口血糖降下薬がいくつか開発中となっており、糖尿病治療の今後の進展に、期待が寄せられています。
日本でもすでに承認され発売されている製剤がありますが、ここでは新薬の基本的な特徴について説明します。
食べ物が小腸など消化管を通るときに分泌されるホルモンがありますが、これらのホルモンがすい臓のβ細胞と結合してインスリンの分泌を促すことが、研究が進むにつれてわかってきました。
それらのホルモンは、総称して「インクレチン」と呼ばれています。
糖尿病になると、この「インクレチン」のインスリン分泌を促す効果が弱まることがわかりました。
それならば「インクレチン」を「外からおぎなう」、あるいは「その弱まったはたらきを活性化する」ことによって、インスリン分泌力を再び高めることができるのではないか…と考えられるようになったわけです。
「インクレチン」には、「GIP」や「GLP-1」などいくつかの種類があります。
「GLP-1」は、すい臓に作用するためには高血糖状態が必要なため、血糖値が正常なときはその作用が抑制され低血糖を起こさないという、好ましい性質を有しています。
またインスリンの分泌を促す効果も、「GIP」よりも「GLP-1」のほうが強いことが明らかになっています。
したがって、インクレチンのなかでも「GLP-1」への注目度が高まっているのですが、この「GLP-1」は、分泌されてもすぐに分解されて消失してしまうという特性をもっています。
「GLP-1」を分解してしまう酵素は「DPP-Ⅳ」と呼ばれていますが、この「DPP-Ⅳ」のはたらきを抑えることによって「GLP-1」の分解を防ぎ、インクレチンの血中濃度を高めようとするのが、「DPP-Ⅳ阻害薬」なのです。
「DPP-Ⅳ阻害薬」は複数申請中ですが、日本では「シタグリプチン」が認可され、2009年12月から発売されています。
もうひとつの「弱まったインクレチンのはたらきを活性化する」薬については、皮下注射によって「GLP-1」と構造がよく似た物質を投与する”GLP-1の注射製剤”があります。
これは医学的には「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。
国内では、すでにGLP-1受容体作動薬「リラグルチド」が承認され、2010年6月から発売されています。
現在、「DPP-Ⅳ阻害薬」と「GLP-1受容体作動薬」のいずれについても、海外の製薬メーカーが複数の製剤を開発中であり、そのいくつかが数年以内に新薬として日本国内の市場にもでてくるとみられています。
国内ではこれらの新薬にも保険が適用されており、糖尿病患者としては今後の治療の選択肢が増えることに期待が高まりますが、一方で市場に出たばかりの新薬でもあり、治療現場においては慎重な取り扱いがなされているのが現状です。
とくにSU薬など他の糖尿病治療薬と併用する場合は副作用の可能性もあり、日本糖尿病協会では、医療機関に向けた使用にかかわる通達を適宜出しています。
【医療従事者向け】「インクレチンとSU薬の適正使用について」(日本糖尿病協会)
これらの薬の服用を許可されない場合もあるため、治療にかかわる状況となった場合には、医師からよく説明を受ける必要があります。