インスリン分泌促進薬につづいて、経口血糖投下薬 その分類と薬の種類 でご紹介した「インスリン抵抗性改善薬」、そして「食後高血糖改善薬」について説明します。
(2)インスリン抵抗性改善薬
インスリンをすい臓から出すのを促す「インスリン分泌促進薬」に対して、インスリンの感受性を良くして効率よくはたらくようにするのが「インスリン抵抗性改善薬」です。
2型糖尿病の患者には、肥満のためインスリンが効きづらい(インスリン抵抗性が強い)タイプが多く、「インスリン抵抗性改善薬」が処方されるケースが多くあります。
インスリンの分泌を促す薬ではないため、この薬だけの摂取によって低血糖が起きることはほとんどありませんが、他の薬と併用されることも珍しくない点には注意が必要です。
ビグアナイド薬(BG)
主に肝臓に作用して、肝臓でブドウ糖が余分に作られるのを抑えます。
また、小腸で食物から分解されたブドウ糖の吸収を妨げるはたらきもあります。
インスリン抵抗性が強い患者に適した薬です(主な製品名は「グリコラン」「メデット」「メトグルコ」「ジベトス」「ジベトンS」)。
通常は主に食後、一日2~3回の服用となります。
作用時間は6~14時間程度です。
食欲を多少抑えるはたらきがあり、肥満や過食傾向の患者に有効とされ、服用中は体重が増えにくくなる点が特徴的です(ただし非肥満者であっても、処方可能です)。
腎臓や肝臓・心臓や肺に重い機能障害や合併症がある患者等に対しては使用されません。
チアゾリジン薬
脂肪細胞にはたらいてインスリン抵抗性を改善し、血糖値を下げる効果があります(製品名は「アクトス」)。
インスリンの分泌を促す作用が無く、低血糖を招くリスクの少ない薬です。
通常は食前か食後、一日1回の服用となります。作用時間は20~24時間程度。
内臓脂肪の多い患者や高血圧の患者の治療にも、効果的とされます。
その一方副作用として、体内の水分が増えて「むくみ」を起こし心臓に負担をかける、また皮下脂肪が増えることによる体重増加が起こりえます。
内臓脂肪が減る反面、皮下脂肪が増加する可能性があるわけで、そのためこの薬を服薬している間は、食事療法の徹底を指導されることになります。
チアゾリジン薬は肝機能や心血管機能に影響を与える可能性が高いため、その使用は慎重に検討され、投与後も注意深い経過観察が行われます。
心不全や重い肝機能障害・腎機能障害の患者に対しては使用されません。
(3)食後高血糖改善薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)
上で述べたような、インスリンの分泌や作用に影響を及ぼす薬ではありません。
食物中のでんぷんは分解され、ブドウ糖が小腸に吸収されますが、このときにはたらく酵素(α-グルコシダーゼ)のはたらきを抑えて、食後血糖値が急上昇するのを抑える薬です。
したがって「α-グルコシダーゼ阻害薬」とも呼ばれます(製品名は「グルコバイ」「べイスン」「セイブル」)。
食事前から血糖値が高い患者には十分に効果が発揮できませんが、食事前は正常ながら食事後に血糖値が急上昇しやすいタイプの患者には適した薬です。
この薬はその性質上、服用が食事の直前に限られます。
食後の服用は効果がありません。作用時間は1~3時間程度です。
とくに飲み始めの副作用として、腹部膨満感があらわれることがあります。
肝臓への影響も強いため、定期的な肝機能検査も必要です。
またこの薬単独の使用で低血糖はまず起きませんが、他の薬と併用されることが多いためその点で注意が必要です。
次のコラムでは、(4)「インクレチン関連薬」についてご説明します。